和還

認知症の父のこと。

感じた違和感

父を初詣に誘ったとき

父の持ち物に小さな違和感を感じた。

 

父が大事そうに抱える黒いカバンの中に

重そうなファイルが見えて

 

初詣には必要なさそうなものを

わざわざカバンに詰めて抱えている。

 

「認知症…?まさか」

「カバンの中身で決めつけたりしてはいけない」

 

そう自分に言い聞かせながら

 

気づかなかったことにしたくて

早く忘れたくて

考えないようにした。

 

母からの電話

ある日、母から電話があった。

「お父さんがいない」

 

実際には

ゴミ捨てに行っただけで

すぐ戻ってきた。

 

そのときの私は

「お母さんはいつも大袈裟なんだから」

と思った。

 

今思えば

あわてて私に電話をかけるほど

母はすでに父の変化を感じとっていたのだ。

 

 

父の入院

今夏、父は体調を崩し入院した。

 

治療により回復したものの

足の骨折が見つかり再び入院。

 

母は持病のため見舞いに行けず

 

刺激の少ない入院生活で

認知症が進行するのではないかと

不安が募る。

 

「母のことを忘れないでほしい」

その思いから 

 

私は毎日病室を訪れ

スマホのビデオ通話で

父と母をつないだ。

 

「お父さんがお母さんの顔見たいって」 

「お母さんがお父さんのこと心配してるよ」

 

間に入り、2人を結ぶ。

互いの体調を気づかう会話がはじまると

私はようやくホッとできる。

 

思い込み

私は看護の道に進んだのだけど

当時は父にも母にもあまり応援されていない

と感じていた。

 

いい点をとっても褒められず

悪い点をとっても叱られない。

 

「誰も私に関心を持っていない」

と思っていた。

 

けれど認知症をきっかけに

父は私にいろいろと尋ねてくるようになった。

 

昨日の面会では

「看護師の試験はどうだった?」

ときいてきた。

 

父の世界では今、私は看護学生なんだ。

 

「合格したよ」

と伝えたら、顔をくしゃくしゃにして

ものすごく喜んだ。

 

「お父さんが一生懸命働いて

学校に行かせてくれたおかげだよ」

と言ったら、涙をぬぐいながら

私にはなむけの言葉をかけてくれた。

 

私はいつも父に応援されていたんだと

反発してばかりだった思春期を

とり戻すように

病室で父との時間を過ごしている。

 

結局いちばん救われているのは私自身なのだ。

 

病院から見えた景色

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